理事紹介:竹部幸夫理事(豪州三井物産)

理事紹介:竹部幸夫理事(豪州三井物産)

この4月にジャカルタからメルボルンに転勤になり移住して来ました。
この全くと言っていい異なる二つの都市を見て改めて思うこと。それはインドネシアと豪州が、地理的に隣国にありながら全く異なる人種と社会・文化・歴史を持ち、異なる発展の仕方をしてきたのだなということです。そしてそれにも増して驚くべきこと、それはこの隣国同士の間に注目すべき歴史的実績がほとんどないということです。

ほとんどないということは、これからに期待が持てるのか、あるいは期待など止めておけということなのか。まぁあなたは日本人なのだから、よその国のことなどどうでも良いでしょう、といわれれば、確かにその通りなのであります。しかし日本人でありながら実際にこの二つの国を渡り歩き、飯を食おうというのですから、他人事じゃないと思うのも人情というもの。

今豪州では中国経済減速のあおりを受けて、その主たる輸出品目である資源の収入が大きく損なわれています。豪州は今後何をもって国際社会に訴えて行くのでしょうか。一方、インドネシアでは政府が懸命に国民の生活レベルを向上させていこうとしており、そのために外国からの投資や技術移転を強く望んでいます。

豪州はその先進性や地理的近接性から、アジアに大きな影響力を行使しようと思えば、できないことではなかったはずです。祖先の英国人は今でも制度やブランドといった価値を創り上げるのが本当に巧い。価値ある「場」を創り、大勢の人を呼び込んでお金を使ってもらい、英国ファンを増やしていく。英国の金融市場や大学産業などはその好例。それを豪州人がアジアでやりきれていないのは何故なのでしょうか。ゲームを作るだけのアジアの基盤がまだ育っていない、そもそも豪州にそんな気もない、等々いろいろ理由はあるでしょう。

私の思うところ次の通りです。豪州人(もしくは英国人)は豪州を一種の理想郷だと思っている。”The most livable” というのも英国人にとってのこと。だってここは欧州のようにストレスフルな軋轢や摩擦、競争のない世界の果てにある楽園なのだから・・・

確かにここはとても豊かな国だと思います。しかし、その楽園も近隣諸国が発展すれば、守らなくてはならないものがどんどん増えていき、一人タコツボの中でじっと篭っていることはできなくなります。豪州が豪州人にとって楽園であり続けるには、近隣諸国とのより深い相互理解と協力関係が不可欠。資源ビジネスが低迷する今こそ、積極的にアジアとの交流を深め、豪州人だけでなく、ここに暮らす我々日本人や中国人など外国人にとってもthe most livable な国になって欲しいと思い致す次第なのであります。

以上

 

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