理事紹介: - 川崎俊彦理事(クボタトラクターオーストラリア)

2009年4月に赴任して3年半が経過しました。私はこれまでに米国(ロス)に2度、通算で11年駐在しており、今回で3度目の海外赴任となります。ロスでの生活が長かったため、私にとってはロスが第二の故郷という感がありますが、メルボルンも、治安が良く、適度な季節感もあり、また気さくな人が多くて、評判通り非常に住みやすい街であると実感しています。

さて、海外赴任をすると、自分の裁量範囲が広がって、夢中で仕事ができるとか、様々な人との交流、経験ができるとか、ポジティブな面は一杯あるのですが、やはり頭の痛い問題のひとつが子供の教育です。学齢期の子供を日本に残すと、父親として十分フォローしてやれないし、海外での貴重な経験、バイリンガル、帰国子女枠での進学等を目論んで帯同しても、余程優秀なお子さんは別として、そう簡単に行きません。私の子供の場合も紆余曲折があったのですが、ひとつの参考事例として紹介させて頂きたいと思います。

私の長男は6年間ロスの現地校に通い、小学5年で日本に帰国しました。帰国して半年ほどして、日本の学校生活に違和感を感じ、一時不登校になりました。この時は叱咤激励の甲斐あり小学、中学と卒業し、高校にも何とか進学することができ、親としてホッとしていました。ところが高校2年の初めになり、勉強量の増加に伴う自由時間とのアンバランスに耐え切れなくなったのか、再び不登校になってしまいました。今度は叱咤激励も効果なく、どうしても学校をやめるの一点張り。親としては正直戸惑い、不安もありましたが、もう高2なんだから、ある程度分別もある筈だと考え、きちんと働くこと、いつか高卒認定資格を取ること、を約束させ中退に合意しました。

長男は、高校をやめてから、晴れ晴れとした気持ちになったのか、近所の外食チェーンで元気にアルバイトを始め、3年間殆ど欠勤することなく働きました。アルバイトも4年目に入った頃、仕事ぶりも認められて徐々に重要な役割も任されるようになり、正社員になるよう強い誘いがありました。親としては内心きちんと定職につけるので、いい話だなと思ったのですが、長男は職場での経験を通して世の中の仕組みが少し分かってきたこともあり、自分の将来について真剣に考え直したようです。そして正社員ではなく、意外にも大学進学を目指したいと言い出しました。

結局、1年足らずの間ですが、大学進学を目指して受験準備に専念することになりました。本人は、ほぼ3年間全く勉強をしていなかったため、学力は著しく低下していたはずですが、逆に、勉強エネルギーが一杯蓄積していたようで、独学で貪るように勉強をするようになりました。高卒認定資格を短期間で取得し、センター試験を経て、最終的には(大方の予想を覆して)本人の第一志望であった国立大学に合格しました。

大学では軽音楽部での活動に力を入れながらも、何とか4年間で卒業しました。当時も厳しい就職難の状況だったのですが、高校を中退して働いた経験が有り、独学で進学したことが逆に高く評価され、第一志望の企業に就職することができました。今は結婚して海外に駐在しています。私も長男はいろんな経験をしたことにより、結果的にはより頼もしく育ってくれたと感じています。人間万事塞翁が馬です。我が家では、2歳年下の二男も同じような道を辿りました。

我が家のケースのように、海外駐在に伴う直接的、間接的影響により子供に教育上の問題が出てくるケースは多々あると思います。その場合、親のできることは限られています。子供を信じて、あとはひたすら祈りましょう。

【略歴】

 滋賀県 栗東市出身、家族:妻+子供3人(長男、二男、長女)

趣味:スポーツ鑑賞(若い頃はバレーボールの選手でした)、読書

1982年 株式会社クボタ入社。以来、海外畑一筋。大阪本社の海外営業部とアメリカのトラクタ販売会社を2往復

2009年 クボタトラクタオーストラリアにMDとして着任

(Visited 796 times, 1 visits today)